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あいちトリエンナーレ2013~Awakening 揺れる大地~

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8/10に始まったばかりの「あいちトリエンナーレ2013」に,
休みを利用して早々に行って参りました。
夏休み期間中という事もあってか,平日でしたが結構な人の入り。
朝の9時半頃から会場は相応の人で賑わっていました。

第2回の開催となる今回は,岡崎市も会場になっていたのですが,
さすがに一日で回ることは出来なかったので,完全にスルー。
(バシーア・マクールとか見たかったです…)
名古屋市内だけで勝負を掛けたのですが,
それでも全作品をしっかりと見ることは出来ないほどのボリュームがありました。
特に惜しまれるのが映像作品。やっぱり,10分を超えるものとなると,
時間の関係上観るのはかなり厳しいです。
「1泊くらいして,ゆっくり見て行って欲しい」
というのが主催者側の本音なのかもしれませんが,
「現代人はなかなか忙しいのですよ」という恨み節の一つも言いたくなります。

ともあれ,「昼飯抜き,ご飯はコンビニのおにぎりだけ」という強行軍(?)の成果もあってか,
全体の8割~9割の作品はしっかりとみることができました。
ちなみに,ざっとコースは以下の通り。

 9:30~11:20 名古屋市美術館(常設展示含む)
11:30~11:45 若宮大通公園 多目的広場(ブラスト・セオリーの作品)
12:00~13:40 納屋橋会場
14:00~14:20 (ベロタクシーにて移動)
14:20~15:30 長者町会場(前半戦)
15:40~15:50 中央広小路ビル(國府理,藤村龍至の作品)
16:00~18:00 愛知芸術文化センター(10F,8F,B2F)
18:20~19:00 長者町会場(後半戦)

余談ですが,各会場で,同じ人に何度も何度もお会いしたので(笑),
割とポピュラーなコースなのかもしれません。
途中,ベロタクシーに乗ったのは,丁度タイミングが合い,
「折角なので」という感じでした。
楽しくお話もさせて頂きましたし,オススメです。

さて,全体としてですが,前回に引き続き
「力入ってるなあ」
というのが率直な感想。作品を作る過程でも,それを展示する段階においても,
とにかく大勢のボランティアスタッフ(や臨時雇用のスタッフ)の方が参加しているのが目につきます。
また,作品自体も
「よくこの規模の物が,ここで実現したな」
というモノが多く,本当に全県を挙げて,このイベントに賭けているんだな,というのが伝わってきます。
正直,僕の住む大阪にはこの規模のアートイベントはないので,
これだけの熱気を地元で感じられるのは羨ましい限りだなあと思いました。

「都市の祝祭」をテーマとした前回2010年と大きく異なり,
今回は震災を経過した後(あるいは,経過している最中といえるかもしれません)の
「揺れる大地」がテーマ。
実直に震災と結び付けた作品と,
テーマを拡大解釈させ「我々の生きる『世界』の揺らぎやすさ」という,
現代美術における大きな(極めてスタンダードな)テーマに沿った作品
の概ね二通りに分かれましたが,
前者の「震災」をテーマにした作品も,ありがちな過剰なセンチメンタリズムに陥ることなく,
冷静でバランスのとれた作品が比較的多くて良かったです。
それでいて震災をテーマにした作品には,本当に「力が入って」いました。
名だたるアーティストが誠実に,かつ熱意をもって作品制作に取り組んだことが伝わってきます。

今回観ることのできた作品の中で,個人的なダントツトップはブラスト・セオリーの作品。
これもまた震災をテーマにした作品の一つでした。
公園の真ん中に置かれた漁船は,津波によって打ち上げられた船の再現。
そして,貸与されるタブレット端末に流れる映像には,
その漁船がこの場に持って来られるまでの過程が映し出されます。
ビクともしない重く大きな漁船が,いとも簡単に地上に打ち上げられてしまうという,
自然の力の強大さ,恐ろしさ。
そして何より,その状況を再現できる,集団としての「人」の力強さ。
それは,震災を乗り越えようとする,被災した漁師の方の姿とも重なります。
公園の真ん中にぶっきらぼうに現前する「結果」の意味が徐々に詳らかにされたとき,
観る者の感情は大きく揺さぶられます。
個人的には,この作品が前回の「小泉明朗」並の大きなハイライトでした。
また,余談となりますが,
挿入歌として先日当ブログでもご紹介した,CLARKの「Iradelphic」から「Black Stone」
が使われていたのも,個人的にはかなり嬉しいポイントでした。

震災をテーマにした作品という意味では,
アルフレッド・ジャーの作品も大変印象深かったです。
名古屋市美術館会場のトップバッターとして配置されたこの作品では,
大空間に並べられた黒板に「生ましめんかな」という詩の一節が映し出されます。
児童によって見つめられ,その最後の眼差しを留めることとなった被災地のものと同様な,
「黒板」に明滅するその文字は,生命の儚さを映し出しているかのようでした。
また,展示の空間構成も見事で,建築家でもあるというアルフレッド・ジャーの実力が
遺憾なく発揮されていたといえるでしょう。

その他,震災をテーマとした作品としては,アーノウト・ミックの作品も必見です。
(アーノウト・ミックに関しては,公式ガイドブックのインタビューでの
「驚くべき誠実さ」が印象に残りました。)

震災を直接的なテーマとしない作品の中でのハイライトは,
何と言っても名和晃平でしょう。
納屋橋会場4Fの大空間に立ち現れる巨大な「泡」は,
それだけで観るものを圧倒します。
その場で生成され,絶えず形を変えるその巨大な塊は,
我々の感覚や世界の壊れやすさ,脆さを象徴しているようでもあり,
儚くも大変美しいものでした。

愛知県立美術館会場の作品としては,個人的には,
ハン・フェンの作品が印象に残りました。
ビルに模した箱が大量に吊り下げられ,揺られている作品は,
非常にコンセプトに対して直截的なモノなのですが,
しかしながらなかなかに美しく,ヴィジュアル的にもかなり強いインパクトがあり,とても面白かったです。
この部屋で写真を撮る人が多かったのも頷ける所です。

その他,コーネリア・パーカーや,ソ・ミンジョン,
ソン・ドンやオノ・ヨーコの作品も印象的でした。

そうそう,長者町会場で見た,山下拓也の作品も,
個人的に印象に残った作品の一つです。
まさか,あいちトリエンナーレで「M.O.S.A.D.」に会えるとは思っていませんでした!
(そもそも,会場を訪れる美術関係者で,モサドを知っている人が何人いるのでしょう?)
この作品の「サンプリング」の「元ネタ」を知っている人間として,
思わず「ニヤリ」とさせられました。
それはさておき,このようなストレートな暗号とポピュラーカルチャーからのゲーム的な引用も,
美術の作品として「認められる」ことに,改めて「現代」の懐の広さを感じます。
選り好みせず,サブカルチャーやポピュラーカルチャーにも一定程度親しんでいることが,
現代美術を楽しむ一つの素養となっているのではないか,と改めて感じました。

ここで紹介出来なかった作品も,いずれ劣らぬ秀作ばかり。
相変わらず,「数の暴力,規模の暴力」となりがちな現代美術において,
鑑賞者の「虚」を巧みに突くようなアイデアが詰まった作品が多くて良かったです。
今回の芸術祭の為の新作,という作品は(前回に比べ)少なかったようですが,
それでも,普段なかなか直接お目に掛かれない作品を存分に堪能することができました。

以上,本当に長い文章となりましたが,
まとめるととにかく,「期待通りの出来。とても楽しかった!」です。
会期中,時間が許せばまた行きたいな,と思っています。
名古屋は遠いですが…

堂島リバービエンナーレ2013(@堂島リバーフォーラム)

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7/20に始まった堂島リバービエンナーレに早速行って参りました。
休日であるということに加え,開始直後と言うこともあってか,結構な人の入りでした。

会場には,「Little Water」をテーマに集められた,様々な形態の作品が並びます。
物語を楽しむものから,純粋にその形状を楽しむものまで色々でしたが,
割と比較的わかりやすいものが多く,またパンフの解説も充実していたので,
身構えずに「安心して」楽しむことができました。

しかしながら,改めて感じたのですが,
キャッチーでストレートな作品には抗いがたい魅力があります。
場内の展示の中でもっともキャッチーかつポップだったのは,
八木良太の一連の作品群でしょう。
「Vinyl」は,「変容」を音と映像で表現するもので,
コンセプトもしかり,またヴィジュアル的にもわかりやすくストレートに面白いですし,
「机の下の海」はとにかく「不思議で楽しい」というエンターテイメント性に富んだ作品でした。
(会場に来ていた幼い女の子が,キャッキャッと楽しそうに立ったりしゃがんだりする様子は
見ていて微笑ましかったです。)

また,「ストレート」な作品としてはチームラボの「憑依する滝」も忘れてはいけません。
緻密な計算の元に描きだされた仮想空間の巨大な「滝」は,
超微細まで描かれるその映像自体の美しさと共に,
何よりもその大きさで見るものを圧倒します。
もちろん,作品の志向はそれ自体ある程度複雑なものなのですが,
小難しい思考を放棄して楽しむことで,
逆説的ではありますが,本作品の志向するコンセプト
(=「滝が憑依する」)に従った鑑賞が出来るのではないかと思います。

若干コンセプチュアルなものとしては,
アラヤー・ラートチャムルーンスックの「二つの惑星」がちょっとしたツボでした。
これは,ミレーの落ち穂拾い(のレプリカ?)を
タイの田舎の村に置いて,村人に好き勝手に色々と話してもらう,
という作品なのですが,文化相対主義や,価値相対主義,
解釈の自由性から,視点の多角性…等々様々に示唆的であるにもかかわらず,
それらの重くなりがちなテーマを,
「人間の好奇心」という非常にお茶目で軽やかな衣で包んでいるところに,
この作品の特異性が感じられました。

その他,石田尚志「海の壁」や,篠田太郎「銀河」などをはじめ,
ここに挙げなかった作品もいずれ劣らぬ力作が揃っています。
比較的狭い会場ながら,作品数は約40点に及んでおり,
ボリューム的にも丁度満足できるくらいの量がありました。
また,「順路」が設定されていない展示自体も,どこか不定形な水の広がりを思わせ,
とても興味深かったです。他のブログでも言及されていましたが,
二階から見る展示の風景それ自体が一つの作品のような美しさ,楽しさを秘めているような,
そんな素敵なものでした。

8/18までと期間が短いので,お早めに。

エヴァンゲリヲンと日本刀展(@大阪歴史博物館)

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何かと話題の「エヴァンゲリヲンと日本刀展」に姉と共に行って参りました。

日本を代表する刀匠が,本気で「エヴァンゲリヲンの世界に出てくる刀剣類」や,
「エヴァンゲリヲンの世界観を基にした新作刀剣」を作ったらどうなるか,というこの展覧会。
日本を代表するアニメと日本を代表する美術工芸のコラボレーションに相応しく,
会場はかなり多くの人で賑わっていました。
客層は,主としてエヴァ・フリークの方々が多かったのですが,
(↑これは着ているTシャツや興味の示し方で分かるのです。)
中には純粋に「Japanese Sword」を見に来た外国の方や御年輩の方も見られ,
コンテンツとしての「日本刀」の強さも垣間見えました。

展示自体は「大変面白かった!」の一言。
とにかく日本刀はそれそのもの自体で美しく,
「アート」としても非常に高いレベルの戦闘力を持っているうえ,
人気アニメとのコラボレーションで,「俗っぽい」面白さも兼ね備えていて,
攻守ともに隙がありません。
「コンセプトの深み」のようなモノこそありませんが,
日本刀そのものの美しさに酔いしれ,人気アニメのアイテムの具現化という,
その事実そのものに浸れば,本展覧会は観覧者に大きな楽しみを与えてくれます。

ハイライトはなんといっても,「ロンギヌスの槍」。
その大きさもさることながら,「ねじねじ」の部分が非常に美しく,
「よくこんなものを作ったな」と驚嘆するばかり。
精密に作られた彫刻や,巨大な彫像を観たときと同様の,
大変大きな驚きと感動を与えてくれました。
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その他のプログレッシブナイフなど「再現系」の刀剣も,
当然の如くエヴァファンの興味を惹きます。
刀身から柄,鞘までこだわり抜いて作られたそれらの刀剣は,
観る前の期待を遥かに超える完成度で我々を出迎えてくれました。

また,「エヴァンゲリヲンの世界観を基にした新作刀剣」も相当な出来。
各キャラクターの特色や特徴が,刀に見事に反映されており,
コンセプトワークから考え抜いた刀匠の苦悩が目に浮かぶようでした。
一押しは,アスカモデルの刀剣。
アスカカラーにネルフのロゴのついた柄も大変美しかったのですが,
何と言っても刀剣自体に彫られたアスカの彫像が目を引きます。
俗っぽいと言えば俗っぽいコンセプトワークではありますが,
その技術そのものに,これまた驚嘆させられました。

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鑑賞の前は,若干「イロモノ」的な雰囲気も感じていた展覧会でしたが,
全体として,「エヴァ」そのものの面白さもあり,日本刀そのものの美しさも十分に活かされた,
幸福なコラボレーションだったと思います。
エヴァファンなら行って損はしない展覧会だと思いますよ。

美の響演~関西コレクションズ~(@国立国際美術館)

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国立国際美術館で行われている特別展「関西コレクションズ」に行って参りました。

関西所在の国公立美術館各館の4番打者クラス,
あるいは看板役者クラスが一堂に会するというこの企画。
何度も観たことがある作品もいくつもありましたが,
なかなか足を運べない和歌山県立美術館や,
滋賀県立美術館所蔵の作品も展示されるということだったので,
重い腰を上げて参戦してきました。

ただ,「4番打者」といっても,いわば「日本プロ野球の4番打者」。
(こういう言い方をするのが適切かどうか分かりませんが…)
「バリバリのメジャーリーガー」と言える作品は,
所蔵品としてはなかなか国内美術館には回ってこないという状況があるが故,
必然的に他の特別展に比して,目玉になるような派手な作品はありませんでした。
しかしながらそれでも,各館の所蔵の秀作が揃っており,結構な見応えがありましたよ。

オーソドックスな時系列型だったので,特に展示について付言することはありません。
「コンテンポラリー」と呼ばれるポイント以降の各時代を代表する作家の,
象徴的な作品ばかりが並んでいました。
個人的に嬉しかったのは,何と言ってもドナルド・ジャッドの作品。
最も好きな作家の一人ながら,作品の所蔵が和歌山県立美術館なので,
なかなか見ることができなかったのです。
いかにも「ジャッドらしい」工業製品と見まがうアルミニウムの物体は,
禁欲的でありながらその構成美故に魅惑的で,
展示の中でも一際異彩を放っていました。

また,国立・滋賀・和歌山の三館に所蔵されているロスコの絵画が,
ずらっと並べられているのも豪華でした。
(展示場所はそこを切り取ればプチロスコルームといった趣でした。)
個人的なお気に入りは,滋賀県美の「ナンバー28」。
ロスコ特有の幽玄な趣が最も端的に表れていると思われるからです。
この作品は,一度滋賀県美で現物を見ているので,嬉しい「再会」ということになりました。

他館の作品をホームで迎え撃つ国立美術館の作品も負けてはいません。
カンディンスキーやフォンタナは相変わらずですし,デュビュッフェ「愉快な夜」の破壊力も
なかなかのものがあります。
今回個人的にツボだったのはロイ・リキテンスタイン「日本の橋のある睡蓮」。
言わずもがな,モネのモチーフの引用ということになるのですが,
ポップアートの手法によって新たな地平の元に昇華された作品からは,
コンテンポラリーの代表的な作家の一人であるリキテンスタインによる,
近代の作家モネへの温かいリスペクトが感じられると同時に,
「オマージュ」という手法に,どこか俗っぽくてねじれたものも感じられ,
ああ如何にも「ポップ」だなあと,思わずニヤリとさせられました。

その他,バスキアやバーネット・ニューマン,フランク・ステラの作品なども好きでした。

冒頭に「メジャーリーガーと日本のプロ野球」という表現を用いましたが,
ある意味ではその表現は言い得て妙だと思っていて,
そこには,「欧米に比べて,元々環境的に決して恵まれていない日本の美術館が,
少ない戦力の中で知恵を絞って,なんとか奮闘している姿」が重なります。
本展覧会も,企画の趣旨からしてもまさにその「奮闘」の跡が透けて見えるかのようなもので,
個人的にはかなり満足することができました。
会期も残りわずかですが,機会があれば足を運ばれるのをオススメします。

それにしても,土曜日の昼間の特別展だというのに,人の入りはまばらでした。
作品に集中できたので,有難かったのは有難かったのですが,少し寂しくもありました。
改めて,日本における現代美術を巡る状況の厳しさを肌で感じた次第です。
「常設展会場をもっと賑やかにしたい」という,本特別展に込められた願いが叶えられる日は少し遠そうです。
ギャラリー
  • あいちトリエンナーレ2013~Awakening 揺れる大地~
  • 堂島リバービエンナーレ2013(@堂島リバーフォーラム)
  • エヴァンゲリヲンと日本刀展(@大阪歴史博物館)
  • エヴァンゲリヲンと日本刀展(@大阪歴史博物館)
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