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Iradelphic~Fantasm Planes/Clark

Iradelphic [解説付 / ボーナストラック収録 / 国内盤] (BRC330)Fantasm Planes [解説付 / ボーナストラック収録 / 国内盤] (BRE41)
Fantasm Planes [解説付 / ボーナストラック収録 / 国内盤] (BRE41) [CD]

Iradelphic [解説付 / ボーナストラック収録 / 国内盤] (BRC330) [CD]
新世代Warp Recordsの代表格,Clarkによる最高傑作とも名高い,
「二部作」です。

Clarkの特徴は「美しい旋律と不穏な音像の同居」と言われますが,
本二部作においては「不穏な音像」は抑えめ。
そう言った意味では非常に聴きやすい作品達であるとも言えます。
しかし他方で,明確なグルーブの存在する楽曲が殆ど無く,
ライナーノーツでも書かれている通り,ビートがあるのにとにかく「踊れない」曲ばかり。
そう言った意味では非常に聴き辛く,
エレクトロニカの中でもある程度リスナーを選ぶ作品の一つ(二つ?)であるという事が出来るでしょう。
従来の作品に比して明確なメロディは少なく,その点でもとっつきにくいという点は否めませんが,
Clark特有の美しい旋律・音像操作は健在です。
聴き方を理解して,揺蕩う音の流れに身を委ねれば,
心地よい生音や小気味良い電子音が新しい世界に連れて行ってくれる,そんな作品だと思います。

先行して発売されたフルアルバム「Iradelphic」での個人的なオススメは
「Tooth Moves」「Black Stone」そして「The Pining pt1~3」でしょうか。
本作のハイライトとなる「The Pining」三部作では,
五拍子のビートの上を,Clarkの本領発揮といえる情緒的な美しい旋律が流れていきます。
比較的明確なグルーブがある作品でもあり,聴きやすさは本作随一だと思います。
また「Tooth Moves」はミニマルなギターのアルペジオと,
どこか牧歌的なシンセのメロディが絡み合う美しい一曲。
中盤以降は,「暴れ出す」シンセのリードが楽曲を盛りたててくれます。
その他,合間を彩るアンビエンスな曲や,
マルティナ・トップレイ・バードの参加したボーカル入りの曲も中々の完成度で聴きごたえがあります。

「Fantasm Planes」は「Iradelphic」のRemix盤とでもいうべき作品。
「Henderson Wrench」「Com Touch」「Secret」の三曲が再構成され収録されています。
オススメは「Com Re-Touch / Pocket for Jack」で,
定型を留めながらも,突然「つっけんどん」になったりする素直ではないビートの上を,
「Com Touch」の美しいメロディが流れていきます。
かと思いきや,後半では突然全く新たな悲しげなモチーフがカットインし,
全く別の世界に連れて行かれてしまうのですが,
ビートのお陰か,全体としての統一感は失われていないという,ちょっと不思議な楽曲です。
その他のRemixやアンビエントも流石の出来。
曲数や収録時間は短いのですが,「Iradelphic」の物語を完結させる為にも,
合わせて本作も通しで聴くことを個人的にはオススメします。

Oversteps/Autechre

Oversteps [帯解説付/ボーナストラック1曲収録/国内盤] (BRC252)
Oversteps [帯解説付/ボーナストラック1曲収録/国内盤] (BRC252) [CD]

このところの自分の気分・趣味趣向にすっぽりとハマって,
頻繁に聴いているのがこのアルバムです。

エレクトロニカ,IDMを代表するデュオ
Autechreについては,深く説明する必要すらないでしょう。
常に実験的かつ革新的である姿勢は,多くのアーティストに影響を与え,
中でもRadioheadのトム・ヨークがその影響を公言したエピソードは,あまりにも有名です。
そのAutechreが,また新たな地平を開拓したのがこの2010年に発売されたアルバムでした。

人によっては「難解に過ぎる」と評されていた名作Confieldですら,
本作の前では,「分かり易い」ものとして感じられます。
untilted辺りまで使用されていた共通言語としてのグルーヴは消え去り,
リズムだけが置き去りにされ,辛うじて定型を留めている音像のみが,
立ち現われては消えていくのです。

ビートレスでアンビエンス。
(正確にはビートは刻まれているものの,
それはもはや「メトロノーム」の役割を果たしてくれる優しさを放棄しています。)
クラブミュージックという範疇からはもはや完全に離脱したAutechreの音は,
さながら「観賞する」ための音像といった趣で,
現代美術を鑑賞しているような,そんな気持ちにさせてくれます。
ビートミュージックの快楽を求めるのであれば,本作は全く役に立たないでしょう。
しかし,その美しい音像を見つめることに喜びを見いだせるのであれば,
深い悦の世界へといざなってくれます。

一番好きな曲は「qplay」ですが,本作は特定の曲をのみ聴くというよりも,
アルバム全体を通して聴くのが良い作品だと思います。
衝撃作というよりは,ジワジワ来る良作といった趣ですが,
既存の音楽に飽きて,新しい刺激を求めている方は是非。

Ultravisitor/Squarepusher

Ultravisitor (通常盤)
Ultravisitor (通常盤) [CD]

もし,「最も好きなアーティストは?」と訊かれたら,
僕は迷わず(いや,少々の逡巡の後に)「Squarepusher」と答えます。
その音楽の持つ複雑性と独特の「ポップさ」,その音楽のもたらす高揚感が,
他のどのアーティストの作品にも代え難く,
その音楽哲学,思想についても共感できる部分が多いからです。

そのSquarepusherの数多くの作品の中でも,
僕の一番のお気に入りで,かつ多くのファンからも「最高傑作」と評されているのが
この「Ultravisitor」です。
(この作品については,あのAphex Twinですら「参った!」という感想を述べているのです。)

全体としては,アシッディなシンセが印象的な曲があり,
ドラムの複雑な打ちこみの曲あり,ベースのソロの曲あり,
ラップに近い曲あり,ノイズコアな曲あり,と非常にバラエティに富んではいるのですが,
明るい曲は殆ど無く,当時のSquarepusherの,
「崖っぷちに立っているような」精神状態を反映した,
思い詰めたような曲ばかりで構成されています。
その張りつめた悲壮感がまた美しく,このアルバムを特別なものにしている気がします。
この感じがまた,ある時期の自分の感情とうまくシンクロしてしまい,
一時期はこのアルバムしか聴いていない,ということがありました。

まさに「全曲捨て曲なし」という,
数少ないアルバムの一つだと個人的には思っているのですが,
ピックアップするとすれば,個人的にこのアルバムの「三本柱」だと思っている,
M1,3,13でしょうか。

M1「ultravisitor」は表題曲で,
複雑な高速ドラムの打ち込みと,中終盤に現れるアシッディなシンセのラインが印象的な一曲。
中盤の「音の嵐」の部分,またその収束に至るまで完璧で,
まさに,悲壮感に溢れたこのアルバムの始まりを告げる,
最高の表題曲であり,最高の「M1」だと思います。

M3「Iambic 9 Poetry」。
アルバムの中で数少ない「明るめ」の曲で,
イントロで奏でられるテーマによって,全体が貫かれています。
その,どこか物悲しげな美しいテーマは,
ドラムラインが徐々に暴れ始めるにつれ,他の音も巻き込んで次第に変容を見せ始めます。
そして,均整のとれたドラムラインと共に疾走し,
高揚感に溢れたラストを演出します。
友人曰く「神々しさに溢れている」というこの曲は,
数あるSquarepusherの曲の中でも特に人気が高く,
掛け値なしに「名曲」との評を与えてよいもの,と思います。

そしてM13「Tetra-Sync」。
アルバム全体を貫く悲壮感が最も如実に表れているのがこの曲です。
序盤の悲しくも整ったメロディは,
徐々に荒れ狂うドラムとアシッディなシンセのサビのメロディに浸食されていき,
次第に音の浪に飲みこまれ,破壊されてしまいます。
そして中終盤の完全な「破壊」から,ドラムソロのパートを経て,
再び悲しげなメロディで収束します。
アルバムの大曲の最後を飾るこのM13は,
「壊れていく美しさ」を感じられる一曲で,
(それは,さながら倉俣史郎の「割れガラスのテーブル」を思わせます。)
個人的には,「世界で一番好きな曲は何か」と質問された時に,
いの一番に候補に挙がってくる,という程のお気に入りです。

さて,M13までの荒んだ空気から一転し,
このアルバムは,少し救いの感じられるM14,15の弦楽器のソロで終結します。
そして,次作「Hello Everything」では(特にM1などに),
うって変って,突き抜けた明るさが感じられるのですが,
それについてSquarepusher自身はこんなコメントを残しています。

崖っぷちまで行った後にすることといったら、笑うことさ!

Day Before Blue/COMA-CHI

DAY BEFORE BLUE
DAY BEFORE BLUE [CD]


このアルバムが出た当時,COMA-CHIというMCに掛けられた期待は,
結構なものがあったと記憶しています。

何故かと言えば,(敢えてはっきり言ってしまえば)
当時の日本人フィメールラッパーの多くが「やや実力不足」だったからでしょう。
女性であることを「変に」強調してみたり,あるいは女性という個性だけで売り出してみたり,
その割にライムやフローがやや稚拙であったり…

そんな中,COMA-CHIは,SSWSやCypherなどフリースタイルで名を挙げ,
当時飛ぶ鳥を落とす勢いだったDa.Me.Recordsにも参加し,
B-Boy Parkでは準優勝まで果たすなど,確実に「スキル」で名前を売っていました。

つまり,ようやく「実力で男性ラッパーに伍する力を持つフィメールラッパーが現れたか」
という状況で発売されたのがこのアルバムだったのです。
個人的にも期待値が高く,少しハードルが高めになっていたのですが,
COMA-CHIは,それを軽々と越えて見せました。

全体を通して感じられるHipHop愛と,「自然体」。
肩肘は張って居ないけれど,確かな上手さがあって,何よりも心地いい。
近しい仲間に作ってもらったと思われるビートもあっさりとしていながら,
しっかりとした主張のあるものが多く,COMA-CHIのラップをしっかりと引き立てています。

M2放浪とM4ミチバタは名曲と言って良い出来だと思います。
どちらも「とんでもない完成度」という曲ではありませんが,
当時のHipHopシーンの「熱」をあったかくパッケージングしたような,
なんとも言えない味があります。
自分達の身の回りの情景を,ありのままの自然体でフローする有様には,
何よりも「リアル」を感じられます。

ちなみに僕は2nd以降は買っていません。
(ただ,そんなにコアなCDを売っていないショップに,
2ndと一緒にこのCDが並んでいたのを見た時には少々嬉しい気持ちになりましたが。)
それでも,この1stは時々聴き返したくなる魅力が詰まっている,と今でも感じます。

melhentrips/なのるなもない

melhentrips

2005年,MSCや降神といったいわゆるアングラ系新世代日本語Hiphopが盛んで,
ちょっとした可能性を感じさせていた時代の真っただ中に発売された,なのるなもないのソロアルバム。
相変わらずちょっとヒネていた僕のセンスにハマり,良く聴いたものでした。

なのるなもないのラップは,むしろポエトリーリーディングとラップとの合いの子ともいうべきで,
スタンダードなラップとはおよそ言い難く,人によっては受け入れられ難いものとも思います。
が,そのクセの強さゆえに,ハマれば強い中毒性のある不思議な世界観を有するものでもあります。
語りかけるような口調,オペラ調の歌,普通のラップとは一線を画す哲学的な歌詞,浮遊感のある音…
こんな音楽もあるんだ,と当時はよく思ったものですが,
色々なクセのあるものを聴いてきた今の耳には,
驚くほどスタンダードに響いてきます。

このアルバムのオススメはshermanshipと帰り道。
shermanshipは,文字通りメルヘンなトラックの上で,
「せめて自分らしくありたい」という気持ちを歌った歌で,さながら「表題曲」と言って良い完成度。
自身の世界観を遺憾なく発揮した,なのるなもないの代表曲と言って良く,
この曲一曲だけでも聴いてみる価値ありだと思います。
帰り道はなのるなもない,というよりは降神の曲と言うべきですが,
サビの謎なキャッチーさも相まって,アルバムの最後を締めるに相応しい,楽しい曲になっています。
このほか,スイカのtotoがfeatしたまわらないで地球や,まちぼうけなんかもお薦めです。

続けてすぐにでも発売されると噂されていた降神の3rdアルバムは7年が経過した今も発売されず,
あんなに熱かったシーンは下火になる一方。
当時日本語Hiphopに触れていた人間の,一体何人がこんな10年後を予想していたでしょうか。
このアルバムを聴いて,こんな時代もあったね,となってしまう現状が少し悲しいです。
ギャラリー
  • あいちトリエンナーレ2013~Awakening 揺れる大地~
  • 堂島リバービエンナーレ2013(@堂島リバーフォーラム)
  • エヴァンゲリヲンと日本刀展(@大阪歴史博物館)
  • エヴァンゲリヲンと日本刀展(@大阪歴史博物館)
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  • エヴァンゲリヲンと日本刀展(@大阪歴史博物館)
  • エヴァンゲリヲンと日本刀展(@大阪歴史博物館)
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  • 美の響演~関西コレクションズ~(@国立国際美術館)