最高裁平成24年1月30日第三小法廷決定の事案。
今年受験生だった人や,最高裁判例をチェックしている人には有名なのかもしれないけれども改めて紹介。
≪事案≫
被告人が,被害者に睡眠薬入りの洋菓子を提供し,事情を知らない被害者をしてこれを食べさせ,六時間に渡る意識障害および筋弛緩作用を伴う急性薬物中毒の症状を生じさせた。
睡眠薬の提供と傷害罪の成立の論点については,従来,「強盗致傷罪や,強姦致傷罪の『傷害』は傷害罪の『傷害』と同一のものであるというべきところ,昏睡強盗や,準強姦罪の場合に常に強盗致傷罪や,強姦致傷罪を成立させるのはおよそ妥当ではないから,睡眠薬を飲ませてこん睡状態に陥らせただけでは傷害罪の成立を認めるべきではない」とする有力な学説が存在していたところである。
しかしながら,本判決は,上記の事案の概要を述べた後に,
もって,被害者の健康状態を不良に変更し,その生活機能の障害を惹起したものであるから,…傷害罪が成立すると解するのが相当である。
所論指摘の昏睡強盗罪と強盗致傷罪等との関係についての解釈が傷害罪の成否が問題となっている本件の帰すうに影響を及ぼすものではなく,所論のような理由により本件について傷害罪の成立が否定されることはないというべきである。
として,前記有力説を採用しないことを明らかとしたものである。
判旨後段の趣旨からすれば,最高裁は強盗致傷罪や強姦致傷罪の『傷害』と,傷害罪の『傷害』にはその範囲・程度に違いがあると解している,というべきなのであろう。
今年受験生だった人や,最高裁判例をチェックしている人には有名なのかもしれないけれども改めて紹介。
≪事案≫
被告人が,被害者に睡眠薬入りの洋菓子を提供し,事情を知らない被害者をしてこれを食べさせ,六時間に渡る意識障害および筋弛緩作用を伴う急性薬物中毒の症状を生じさせた。
睡眠薬の提供と傷害罪の成立の論点については,従来,「強盗致傷罪や,強姦致傷罪の『傷害』は傷害罪の『傷害』と同一のものであるというべきところ,昏睡強盗や,準強姦罪の場合に常に強盗致傷罪や,強姦致傷罪を成立させるのはおよそ妥当ではないから,睡眠薬を飲ませてこん睡状態に陥らせただけでは傷害罪の成立を認めるべきではない」とする有力な学説が存在していたところである。
しかしながら,本判決は,上記の事案の概要を述べた後に,
もって,被害者の健康状態を不良に変更し,その生活機能の障害を惹起したものであるから,…傷害罪が成立すると解するのが相当である。
所論指摘の昏睡強盗罪と強盗致傷罪等との関係についての解釈が傷害罪の成否が問題となっている本件の帰すうに影響を及ぼすものではなく,所論のような理由により本件について傷害罪の成立が否定されることはないというべきである。
として,前記有力説を採用しないことを明らかとしたものである。
判旨後段の趣旨からすれば,最高裁は強盗致傷罪や強姦致傷罪の『傷害』と,傷害罪の『傷害』にはその範囲・程度に違いがあると解している,というべきなのであろう。