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2013年07月

Iradelphic~Fantasm Planes/Clark

Iradelphic [解説付 / ボーナストラック収録 / 国内盤] (BRC330)Fantasm Planes [解説付 / ボーナストラック収録 / 国内盤] (BRE41)
Fantasm Planes [解説付 / ボーナストラック収録 / 国内盤] (BRE41) [CD]

Iradelphic [解説付 / ボーナストラック収録 / 国内盤] (BRC330) [CD]
新世代Warp Recordsの代表格,Clarkによる最高傑作とも名高い,
「二部作」です。

Clarkの特徴は「美しい旋律と不穏な音像の同居」と言われますが,
本二部作においては「不穏な音像」は抑えめ。
そう言った意味では非常に聴きやすい作品達であるとも言えます。
しかし他方で,明確なグルーブの存在する楽曲が殆ど無く,
ライナーノーツでも書かれている通り,ビートがあるのにとにかく「踊れない」曲ばかり。
そう言った意味では非常に聴き辛く,
エレクトロニカの中でもある程度リスナーを選ぶ作品の一つ(二つ?)であるという事が出来るでしょう。
従来の作品に比して明確なメロディは少なく,その点でもとっつきにくいという点は否めませんが,
Clark特有の美しい旋律・音像操作は健在です。
聴き方を理解して,揺蕩う音の流れに身を委ねれば,
心地よい生音や小気味良い電子音が新しい世界に連れて行ってくれる,そんな作品だと思います。

先行して発売されたフルアルバム「Iradelphic」での個人的なオススメは
「Tooth Moves」「Black Stone」そして「The Pining pt1~3」でしょうか。
本作のハイライトとなる「The Pining」三部作では,
五拍子のビートの上を,Clarkの本領発揮といえる情緒的な美しい旋律が流れていきます。
比較的明確なグルーブがある作品でもあり,聴きやすさは本作随一だと思います。
また「Tooth Moves」はミニマルなギターのアルペジオと,
どこか牧歌的なシンセのメロディが絡み合う美しい一曲。
中盤以降は,「暴れ出す」シンセのリードが楽曲を盛りたててくれます。
その他,合間を彩るアンビエンスな曲や,
マルティナ・トップレイ・バードの参加したボーカル入りの曲も中々の完成度で聴きごたえがあります。

「Fantasm Planes」は「Iradelphic」のRemix盤とでもいうべき作品。
「Henderson Wrench」「Com Touch」「Secret」の三曲が再構成され収録されています。
オススメは「Com Re-Touch / Pocket for Jack」で,
定型を留めながらも,突然「つっけんどん」になったりする素直ではないビートの上を,
「Com Touch」の美しいメロディが流れていきます。
かと思いきや,後半では突然全く新たな悲しげなモチーフがカットインし,
全く別の世界に連れて行かれてしまうのですが,
ビートのお陰か,全体としての統一感は失われていないという,ちょっと不思議な楽曲です。
その他のRemixやアンビエントも流石の出来。
曲数や収録時間は短いのですが,「Iradelphic」の物語を完結させる為にも,
合わせて本作も通しで聴くことを個人的にはオススメします。

堂島リバービエンナーレ2013(@堂島リバーフォーラム)

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7/20に始まった堂島リバービエンナーレに早速行って参りました。
休日であるということに加え,開始直後と言うこともあってか,結構な人の入りでした。

会場には,「Little Water」をテーマに集められた,様々な形態の作品が並びます。
物語を楽しむものから,純粋にその形状を楽しむものまで色々でしたが,
割と比較的わかりやすいものが多く,またパンフの解説も充実していたので,
身構えずに「安心して」楽しむことができました。

しかしながら,改めて感じたのですが,
キャッチーでストレートな作品には抗いがたい魅力があります。
場内の展示の中でもっともキャッチーかつポップだったのは,
八木良太の一連の作品群でしょう。
「Vinyl」は,「変容」を音と映像で表現するもので,
コンセプトもしかり,またヴィジュアル的にもわかりやすくストレートに面白いですし,
「机の下の海」はとにかく「不思議で楽しい」というエンターテイメント性に富んだ作品でした。
(会場に来ていた幼い女の子が,キャッキャッと楽しそうに立ったりしゃがんだりする様子は
見ていて微笑ましかったです。)

また,「ストレート」な作品としてはチームラボの「憑依する滝」も忘れてはいけません。
緻密な計算の元に描きだされた仮想空間の巨大な「滝」は,
超微細まで描かれるその映像自体の美しさと共に,
何よりもその大きさで見るものを圧倒します。
もちろん,作品の志向はそれ自体ある程度複雑なものなのですが,
小難しい思考を放棄して楽しむことで,
逆説的ではありますが,本作品の志向するコンセプト
(=「滝が憑依する」)に従った鑑賞が出来るのではないかと思います。

若干コンセプチュアルなものとしては,
アラヤー・ラートチャムルーンスックの「二つの惑星」がちょっとしたツボでした。
これは,ミレーの落ち穂拾い(のレプリカ?)を
タイの田舎の村に置いて,村人に好き勝手に色々と話してもらう,
という作品なのですが,文化相対主義や,価値相対主義,
解釈の自由性から,視点の多角性…等々様々に示唆的であるにもかかわらず,
それらの重くなりがちなテーマを,
「人間の好奇心」という非常にお茶目で軽やかな衣で包んでいるところに,
この作品の特異性が感じられました。

その他,石田尚志「海の壁」や,篠田太郎「銀河」などをはじめ,
ここに挙げなかった作品もいずれ劣らぬ力作が揃っています。
比較的狭い会場ながら,作品数は約40点に及んでおり,
ボリューム的にも丁度満足できるくらいの量がありました。
また,「順路」が設定されていない展示自体も,どこか不定形な水の広がりを思わせ,
とても興味深かったです。他のブログでも言及されていましたが,
二階から見る展示の風景それ自体が一つの作品のような美しさ,楽しさを秘めているような,
そんな素敵なものでした。

8/18までと期間が短いので,お早めに。

ダウン・バイ・ロー

「そもそも法律とはなんなのか」
「それは正義と言えるのか」
そんなことを考えている人の話を某所にて見ました。

「法律とは何か」

非常に哲学的な問いかけですが,この問いかけについて,
個人的には,割とシンプルな答えを結構以前から持っていて,
それは今でも変わっていません。

個人的な解釈では,
法律とは,暴力そのものだと思います。
そこには本来的に絶望しかない。
ただ,その絶望の中に,希望的なものを見出そうとするなら,
まずその絶望に対する自覚と,覚悟,そして,
何よりも誠実さがなければならないのだと思います。
逆説的な言い方になりますが,決して希望には辿りつけないと分かってなお藻搔くその姿の中に,
希望的なものが少し見えるのかな,と思います。

そしてそれは,権威や独善とは全く逆の地平にある。

誠実に,覚悟を決めて,法律に携わっていきたい,
と,心からそう思います。

エヴァンゲリヲンと日本刀展(@大阪歴史博物館)

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何かと話題の「エヴァンゲリヲンと日本刀展」に姉と共に行って参りました。

日本を代表する刀匠が,本気で「エヴァンゲリヲンの世界に出てくる刀剣類」や,
「エヴァンゲリヲンの世界観を基にした新作刀剣」を作ったらどうなるか,というこの展覧会。
日本を代表するアニメと日本を代表する美術工芸のコラボレーションに相応しく,
会場はかなり多くの人で賑わっていました。
客層は,主としてエヴァ・フリークの方々が多かったのですが,
(↑これは着ているTシャツや興味の示し方で分かるのです。)
中には純粋に「Japanese Sword」を見に来た外国の方や御年輩の方も見られ,
コンテンツとしての「日本刀」の強さも垣間見えました。

展示自体は「大変面白かった!」の一言。
とにかく日本刀はそれそのもの自体で美しく,
「アート」としても非常に高いレベルの戦闘力を持っているうえ,
人気アニメとのコラボレーションで,「俗っぽい」面白さも兼ね備えていて,
攻守ともに隙がありません。
「コンセプトの深み」のようなモノこそありませんが,
日本刀そのものの美しさに酔いしれ,人気アニメのアイテムの具現化という,
その事実そのものに浸れば,本展覧会は観覧者に大きな楽しみを与えてくれます。

ハイライトはなんといっても,「ロンギヌスの槍」。
その大きさもさることながら,「ねじねじ」の部分が非常に美しく,
「よくこんなものを作ったな」と驚嘆するばかり。
精密に作られた彫刻や,巨大な彫像を観たときと同様の,
大変大きな驚きと感動を与えてくれました。
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その他のプログレッシブナイフなど「再現系」の刀剣も,
当然の如くエヴァファンの興味を惹きます。
刀身から柄,鞘までこだわり抜いて作られたそれらの刀剣は,
観る前の期待を遥かに超える完成度で我々を出迎えてくれました。

また,「エヴァンゲリヲンの世界観を基にした新作刀剣」も相当な出来。
各キャラクターの特色や特徴が,刀に見事に反映されており,
コンセプトワークから考え抜いた刀匠の苦悩が目に浮かぶようでした。
一押しは,アスカモデルの刀剣。
アスカカラーにネルフのロゴのついた柄も大変美しかったのですが,
何と言っても刀剣自体に彫られたアスカの彫像が目を引きます。
俗っぽいと言えば俗っぽいコンセプトワークではありますが,
その技術そのものに,これまた驚嘆させられました。

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鑑賞の前は,若干「イロモノ」的な雰囲気も感じていた展覧会でしたが,
全体として,「エヴァ」そのものの面白さもあり,日本刀そのものの美しさも十分に活かされた,
幸福なコラボレーションだったと思います。
エヴァファンなら行って損はしない展覧会だと思いますよ。

おおきく振りかぶって

おおきく振りかぶって (1)
おおきく振りかぶって (1) [コミック]
正確には姉が買った本,ということになりますが,
オススメの漫画です。
もとはと言えば,僕が先にアニメでハマっていて,
姉が後からハマった,という感じなのですが,
今では姉の方がどっぷりと漬かっています。

タイトルから分かる通り,野球漫画なのですが,
主人公は「ヘナヘナのボールしか投げれない,
ナヨナヨした卑屈なピッチャーの三橋」。
(この段階で,この漫画が如何に曲者かが分かるでしょう。)
そのひとクセもふたクセもある主人公が,
周りの仲間と共に成長しつつ,甲子園優勝を目指す姿,が描かれており,
平凡なスポ根サクセスストーリーとは一線を画す,
ある種特殊な,それでいて「本格的な」高校野球漫画と言われています。

本作が「本格的」と言われる所以は,
著者による入念な取材に基づいて,
高校野球のありとあらゆるディテールが描かれていることにあります。
例えば,メインとなる試合の描写においては,
「投げた!」「打った!」の様子よりも
「投げるまで」「打つまで」の膨大な駆け引きの方に描写の重点が置かれています。
その,従来の野球漫画ではなかなか描かれてこなかった高度な読み合い,仕掛け合いの描写は,
野球をしたことがない層にも,あるいは野球すら全く知らない層にさえ,
十分「野球の試合」を楽しませてくれます。
また,試合の外の風景の描写も見事で,
登下校中の会話から,マネージャーの仕事風景,
父母会の応援の様子や,男同士の下ネタ話に至るまで,
高校野球を取り巻く諸々が「これでもか」という程に書きこまれています。
これらのディテールの描写により,本作は圧倒的なリアリティを獲得しており,
ストーリーとして異端であるにもかかわらず,方々にて,
「本格的高校野球漫画」
と評されることとなっているのです。

もう一つの本作の魅力は,
大学で心理学を専攻していたという著者ならではの,
見事な心理情景描写でしょう。
登場人物の心の揺れ動きや,機微が,
これまた細かく描かれており,その一つ一つに「わかるなあ」「そうそう」,
と思わず頷いてしまいます。
時々,自分の心の中を抉られるような描写もあり,
読んでいて胸が苦しくなることもあります。

また,登場人物のキャラクターが「キャラ立ち」していることも大きな魅力です。
主人公の三橋の他,
切れ者ながらやや傲慢な所のあるキャッチャー阿部,
天才的なセンスを持ち,天真爛漫な所がありながら繊細な所のある田島,
真面目すぎる部分があり,田島の壁を常に意識させられているキャプテン花井などなど
各々のキャラクターにそれぞれの魅力があり,
キャラクターウォッチングをしているだけでも飽きません。
読了後は,「どのキャラが一番好きか」「どのキャラに感情移入できたか」
ということを思わず話したくなってしまうこと請け合いです。

野球経験者の方からすれば「現実はそんなに甘いもんじゃないよ」
と怒られてしまいそうな「都合のいい」ファンタジーな部分もあって
やっぱり漫画だなあとは思いますが,
それだけでは片づけられない,本当に大きな魅力を秘めた漫画だと思います。
著者ひぐちアサさんは,本作で
2006年第10回手塚治虫文化賞・新生賞、
2007年第31回講談社漫画賞・一般部門を受賞されているのですが,それも頷けます。
「未読の方は是非」と,自信を持って勧められる本当に数少ない漫画の一つです。

ちなみに,僕の一番好きなキャラクターは迷いに迷った挙句阿部なのですが,
姉の一番好きなキャラクターは栄口くんだそうです(笑)。
(わからないでもないですが,セレクトがコアすぎませんか…?)
ギャラリー
  • あいちトリエンナーレ2013~Awakening 揺れる大地~
  • 堂島リバービエンナーレ2013(@堂島リバーフォーラム)
  • エヴァンゲリヲンと日本刀展(@大阪歴史博物館)
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  • 美の響演~関西コレクションズ~(@国立国際美術館)